ザァ…
昼間は晴れていたのに夜になり急に土砂降りの雨が降ってきた。
10月になるとこの時間帯は少し厚着をしなければ風邪をひいてしまう。
普通なら夜遅い時間にもなると、この住宅街は静寂に包まれる…のだが今日は違った。

「おいなんだよその目は!ガキのくせに!」

パァン!

みんなが寝静まり静かな住宅街に怒鳴り声と耳を塞ぎたくなるような何かを叩く音が響き渡る。
残業が終わったのだろうか。1人のサラリーマンが大きな家の前を通り過ぎる…そのサラリーマンは大きな家の前で起きてる出来事を見てしまい目を見開いた。
この土砂降りの中、まだ5歳くらいだろうか、母親らしき女が小さな女の子を怒鳴りつけ何度も何度も頬を叩き蹴りつけてるではないか。
しかもその女の子は…裸足でシャツとパンツだけしか身にまとっていない。
大人でも震える寒さなのにましてや小さな子供…
ふとサラリーマンは家の前の表札を見て固まった。

「九条」

その表札を見たサラリーマンは女の子に申し訳ないと思いながらも顔を真っ白にしてその場を後にした。
九条…この辺りでは有名な企業の社長宅だ。
もし関わって大事になってしまえば…自分が働いている会社が潰されるかもしれない。
女の子が虐待されてる所を見ても誰も助けようとはしなかった。
関わったら自分の人生が崩れてしまうかもしれないから。