ケータイ小説 野いちご

冷たいキスなら許さない

恋愛不要の秘書
秘書のお仕事

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翌週金曜の午後、外回りをしていた行政書士事務所から戻ると事務所に大和社長がいた。

「あれ?何で社長?」

オフィス内にある応接セットのソファーに下北さんと向かい合って座って何やら書類の束とにらめっこをしている。

「お帰り、灯里さん。大和にコーヒーお願いできる?」
下北さんが顔を上げて微笑んだ。
「はい。かしこまりました。下北さんもコーヒーでいいですか?」

「うん、頼むよ」
下北さんが頷いてちらりと社長に意味ありげな視線を送る。

おおっと、どうやらわが社の御大はご機嫌ワルワルらしい~。社長の周りをどす黒いオーラが漂っている。
私の方をちらっとも見ようとしないし。
だいたい私に連絡しないでこっちに来るなんてことも初めてだ。

自分のデスクに荷物を置いて給湯室に向かうと、事務の杉本さんが急いでやってきた。

「本木さん、ごめんなさい。本当なら私がお茶出ししないといけないのに」
申し訳なさそうに両手をこすり合わせて上目づかいで私を見た。

「いいですよ。下北さんにやらなくていいって言われたんですよね。それにアレは来客じゃないんだからお茶出しなんて気をつかわなくていいんです」

「来客じゃないけど社長ですよ。
でも、そうなの。私がお茶出しをしようと立ち上がったら、下北さんがゼスチャーでいいって」
うんうんそうだろうね。


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