店に入ってから勇者は実に手早く購入を済ませる。
なにせ彼はこれから今来た道を帰らなけれべならないのだ。
家に帰るまでがミッションです。
のんびりしている暇はない。

「ポン・デ・リング2つとオールドファッションのチョコ1つとハニーチュロ1つ。あと、エンゼルクリームとエンゼルカスタードも1つずつ。袋は2重にしてください。」

こんな日でも客来るのかよという店員の若干めんどくさいという雰囲気を感じながら勇者は会計を済ませる。
勇者にとってそんなことはどうでもいいのだ。

店を出ようと外を見れば先程よりも幾分か風が強くなっているように感じた。
勇者は思わず唾を嚥下する。
今からの最優先事項はドーナツを死守する事だ。
その為にエンゼルと名のつくドーナツも買ったのだ。
無事に帰れたら神棚にお供えするために。
神様、仏様、天使様である。
勇者は覚悟を決めて外へ出た。

次の瞬間早速風の刺客が襲いかかる。

「くっ、速い!」

視界の遠くに捉えたものは大きな看板。
咄嗟に身を引いて避けるが頬を掠めた。

「ふぅー、この俺じゃ無ければ確実に大怪我だっただろうな。」

自分に酔いしれる勇者をミスタードーナツの店員が一歩引いてみていたことには気付かずに彼は帰路につくのであった。