ようやく勇者は大通りに辿り着いた。
角を曲がれば後は直線100メートルだ。
壁のような向かい風から逃れられると思った勇者は完全に不意打ちで現れた人物に油断した事を後悔する。

「しまったっ!」

「君!こんな日に何故出歩いている!?」

相手はお巡りさんだ。
だが勇者にはやらねばならない事がある。
こんなところで足止めをくらう訳にはいかない。

「家はどこだ?パトカーで送っていこう。」

トタンや瓦が飛ぶ程の風だ。
お巡りさんは善意の塊として言ってくれているのはよく分かる。
こちらに歩みを進めるお巡りさんにゴメンと心の中で謝りながら勇者は伸ばされた手をグイッと引っ張りその勢いのまま背後へと投げ飛ばした。

そう。
後ろはあの風の壁である。

「なっ!?」

みるみるうちにお巡りさんは見えなくなった。
勇者は一度黙祷を捧げるとクルリと進行方面を見据えた。
ミッションに犠牲は付き物なのである。

さあ、今度こそ残るは直線100メートルだ。
進め!勇者よ!