【古川海澪side】
「海澪ちゃん、テニス得意なんだよね?」
「うん、大好き!」
「…最後だけもう1回。」
このやり取りだけで一日が潰れそうなくらいだわ。
柊秀一。
私の…恋人です。
蒼空に告白した次の日から付き合うことになった私たち。
ほんとに私が彼女でいいのかって言うくらいかっこいい人。
「…今日は何するの?」
週末の私の日課。
今までは家でゴロゴロしたりしてたんだけど、付き合うようになってからはこうして出かけるようになっていた。
「海澪ちゃんどこ行きたい?」
…私は…
李那と遊ぶならいつもカラオケなんだけどなあ…
最近はデートだから…カラオケはなしだよね…
「じゃあいつもみたいにテニスしようよ!」
「…ほんと海澪ちゃんテニス好きだよね…
俺、体持つかなあ?」
「なよなよしすぎでしょ…」
「なんだかんだ海澪ちゃんって俺のこと名前で呼ばないよね?
秀一、ほらよんでごらん?」
…ぐっ…
いつも適当にはぐらかしてきたこと。
「秀一、リピートアフターミー?」
「…しゅ、ういち…」
いざ名前で呼ぶと恥ずかしい…
付き合ってかれこれ1ヶ月。
名前呼ぶのがこんなに恥ずかしいなんて…
「ねー、あそこにリア充がいるよ?」
「こら、そんな大きな声で言わないの。」
「思ってないよね。声が大きいもの。」
バッと後ろを振り返ると李那と裕くんがいた。
「何やってるのさ、2人して。」
「…テ、テニスだよ!」
「へぇ?
…柊は何を赤くなっているのかな?」
李那は秀一の方をみてニヤニヤしている。
「ねぇ裕くん、柊がニヤニヤしてる、気持ち悪い。」
「お前がそれを言うな。」
李那と裕くんはなんだかんだ私たちを暖かく見守ってくれている。
「そういや明日から新学期だけど準備した?」
李那はたまにまともなことを言う。
…準備…してないや…
「私はもう準備終わってるよ〜
ただ、制服が入るかわからん」
ケラケラと笑う彼女は変わらない。
李那で制服入らないんなら私もかなりやばいよ…
夏休みは怖い。
太る。
ぐーたらしすぎて太ってしまうのが夏休みだ。
「李那、体はどう?」
「え?太ったかって?」
…そういう意味じゃないんだけどな…
李那はいつもこうだ。
心配して聞いてるのに何故か笑ってしまうような答えが返ってくる。