本日4月9日、私の通い始めた藤咲高校の入学式。
クラス分けの名簿をざっと見て、自分の名前を探していく。
「あ、あった…!」
《1年3組》
と書かれた下にあった私の名前。
「3組かぁ…」
この学校は自宅から遠いところにあるから、何人かしか中学校からの友達はいない。
その上、この3組は…
「知ってる人誰もいないじゃん…」
開始早々溜息。
もっと、ウキウキしながら、ここまで来たはずなのに、私ったら…。
諦めるのはまだ早い。
友達を作るスピードなら、今まで誰にも負けたことない!
変な自信とともに、私は下駄箱に靴をしまった。


「うっ…」
しかし、その自信もすぐに崩れそうになる。
(なんでもう、みんな仲良くなってるの?)
私が思っていたほど、みんなは甘くなかった。
グループはもういくつも出来上がっていて…。
入れない。
どうしよう。
どうしたらいいかな…。
すると、その時。
「あのぉ、そこ私の席なんだけど…」
「えっ!?ごめんなさい!!」
目の前に立っていたのは、髪をポニーテールにした活発そうな女の子。
(可愛いっ…)
それが第1の感想だった。
「大丈夫だよ」
笑顔で席につく彼女を見て、私は思い切って声を出した。
「あ、あのさ!」
「ん?」
「私、神崎彩奈!名前、なんて言うの?」
自己紹介と一緒に名前を聞いてみる。
すると、その子はくすっ、と笑った。
「私は、上川紗香。よろしくね、彩奈ちゃん!私のことは紗香でいいよ!」
紗香の笑顔はとても可愛かった。


「彩奈ちゃんの席は、私の後ろだよね?」
とんとん、と指先で後ろの席を叩く紗香。
「えっ、ほんとだ!」
名前的にも、私の位置は紗香の後ろみたい。
これは仲良くなれるチャンスかも…?
友達になりませんか、って変だよね。
でも、友達になろ!っていうのは強引だよね。
じゃあ、どうしたら嫌われないかな?
仲良く出来るかな?
不安でいっぱいになってしまう。
すると。
「ね、彩奈ちゃんは、このクラスに仲のいい友達いる?」
「えっ、いや、いないけど…?」
唐突な紗香の質問に、驚きを隠せない。
紗香は何を考えてこんなことを?
「もし良かったら、私と友達になってくれないかな?」
「えっ!?」
私は驚いて口を塞いだ。
紗香にそんなこと言われるなんて…。
「嫌?」
そんなこと…絶対無い。
私だって、仲良くなりたい。
「いいよ、わたしも紗香と仲良くなりたい!」
笑顔で答えると、紗香も嬉しそうに笑った。


そんなこんなで、割といいスタートが切れた4月9日。
その後2人で喋っていると、私の隣の席にドン、とバッグが置かれ。
「あ、和也おはよー」
「…おはよ」
紗香が和也と呼んだその男子は、どうも反応が鈍かった。
この人が、隣の席…。
ちょっと、怖いカモ…。
でも、そんな考えはすぐに打ち消された。
「おー、和也!おはよう!!」
「あ、お前このクラスなん?」
男子に声をかけられ、反応している和也くんは、予想よりもずっとフレンドリーだった。
「彩奈ちゃん、和也気になる?」
「えっ、いや!隣の席だし、どんな人なんだろうな…って思っただけで」
ニヤニヤと笑顔を浮かべる紗香は、明らかに何か勘違いしてるみたい。
「ま、恋バナとか後で聞かせてよね!

ほらぁ、やっぱり勘違いしてる!!!
でも、いい感じに仲良くなれるかな!