窓際の席に、向き合って座った。

店内にはのんびりとした音楽が流れ、客は殆どいない。

「さすがに、この時間だと空いてるね」

「そうですね」

僕の言葉に、彼女が頷く。

やがて店員さんが来て、僕はホットコーヒーを、彼女はカフェラテを頼んだ。



しばらく話していると、

「皆川さんは、ミュージシャンを目指しているんですか?」

カフェラテを飲みつつ訊いてきた。

「うん。そうだよ」

「やっぱりそうなんですね。歌、本当に上手いですもんね」

「いやー。お世辞が上手いなぁ」

「お世辞なんかじゃありませんよ。なれますよ、プロのミュージシャンに」

「なにその、断言」

「先見の明ってやつです」

「先見の明、かぁ」

2人でクスリと笑う。

時刻は午後11時を回っている。

そろそろ帰った方がいいだろうか。

その前に…。僕は意を決して、言った。

「あの…、もし良かったらでいいけど、連絡先、交換しない?」

「いいですよ。ケータイですよね?」

「う、うんっ」

声が上ずる。

少し手間取りながらも、僕は山岸さんとの連絡先の交換に成功した。



「それじゃあ、また連絡するから」

それで、今日はお開きになった。