俺は寝ている有紀を抱えて俺が予定の部屋に連れて行った。
有紀をベッドに寝かせてから親父に電話した。
「もしもし、親父?」
『主役がぬけてどうするんだよ!早く戻ってこい!』
電話ごしに怒鳴られた。
「それは無理。有紀が酒飲んで寝た」
『いいから戻ってこい!』
ブチッ
切りやがった。
俺はメモに走り書きしたやつをテーブルの上に置いて、ちゃんと鍵をかけてから見合い会場に向かった。
俺は愛想笑いを顔にはりつけて俺の席に座った。
「あ、和海くんどこにいってたの?」
香水臭いおばさんが近づいてくる。
「秘密です」
にっこり笑って誤魔化す。
「あら、和海くんがそう言うならいいわ」
おばさんはこっちに擦り寄ってくる。
キショいからそれ以上近づくなという本音を飲み込む。
早く有紀のところに戻りたい。
「ちょっと、すいません」
俺は我慢出来ずに席を立った。
「おい、和海待て」
親父が呼び止めた。
「今から挨拶しろ」
はあ?
俺は親父に言われるがままにマイクを持った。
「これが終わったらどっかに行ってもいいぞ」
という餌に釣られて。
「皆さん、本日はお集まりいただき誠にありがとうございます。有紀さんはご気分がすぐれないので、挨拶は省かせていただきます」
中身のない話しで終わらせた。