ケータイ小説 野いちご

この作品のキーワード

次期国王はウブな花嫁を底なしに愛したい

第一章、心に響く口づけ


雨が降りだしていることに気付き窓から曇天を見上げている村人、店じまいをするのか店先を片付けていたパン屋の店主、それから家路を急ぐリリアの友人たちが、村の中を軽快に走りゆく見慣れぬ白馬に、それぞれ動きを止めて注目する。

皆最初は白馬に気を取られ、それから手綱を操る美しい男に目を奪われ、最後に一緒に馬に乗っているリリアに対しなぜそこにと驚きの表情を浮かべる。

気恥ずかしさに頬を赤らめながらも、大人しくオルキスの両腕の間に収まっていたリリアだったが、屋敷を取り囲む白い柵の一部を視界に捕らえると、焦り気味に後ろを振り返る。


「その角を左へ曲がれば、すぐにアレグロ村長の屋敷よ……だから私、この辺りで降りるわね」

「いや。まだ降りなくていい」

「……でも」


もし父にこの状態を見られてしまったら、不機嫌さに拍車をかけてしまいそうな気がして、それは困るとリリアはオルキスに目で訴えかけてみる。

しかし、オルキスも自分の意見を譲らないとばかりに軽く微笑みを浮かべ、リリアの視線を受け流す。

角を曲がり、柵の先にある小さな門扉を目で確認し、オルキスは馬の手綱を引く。

門の手前で完全に白馬が足を止めた時、きっと門扉が開き、馬を引きながら男が出てきた。



< 43/ 224 >