お昼ご飯を食べている最中も山本 楓はずっと朝の告白のことを考えていた。

授業中も告白の瞬間を何度も思い出しては私に告白してきた彼の顔を思い出した。

「楓、そんな嬉しそうな顔して、なんかいいことでもあった?」
そう聞いてきたのは隣の席の清水絵見、彼女とは中学からの付き合いで私にとって姉のような存在だ。

「私そんな嬉しそうな顔してた?」

「うん。心ここに在らずって感じだったよ」
そんな顔してたなんて、なんだかすごく恥ずかしくなってきた。

「実はね今朝隣の扇高校の人に電車で告白されたんだ」

「マジ? 電車で告白なんてそいつやばいやつじゃないの?」
絵見が急に真顔でそんなこと聞いてきたので私は少しおかしくなった。

「すごく真面目そうな人だよ。名前は知らなけどいつも朝同じ電車に乗る人なの」

「ずいぶん嬉しそうに話すね。その人のこと好きなんだ」

急に核心を突かれたので「うん」とだけしか言えず下を向いた。

絵見がこっちを見てニヤニヤ笑っているのが顔を見なくても分かった。

「まあよかったね。返事はもちろんOKなんでしょ?」

「それがね、断ったの」

「バカ、なんで断ったのよ」

「だって急だったから驚いて」
自分でもバカだってことはわかってる。

でも中学も私立の女子校だった私は男子と付き合ったどころかまともに話しをしたのだって小学生が最後だ。

急に付き合ってくれと言われても、どうすればいいのかわからなかった。

「でもその人のことが好きなんでしょ?」
絵見は少し怒ったように聞いてきた。

「うん。ほんとは初めて彼を見た時からかっこいい人だなって思ってた」

「じゃあ明日それをちゃんと伝えた方がいいよ。後悔しないようにね」

絵見はまるで自分のことのように私のことに一生懸命になってくれる。

だから彼女がすきなのだ。