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愛される自信をキミにあげる

プロローグ

プロローグ

「俺と結婚してほしい」
 誰にでも結婚に憧れはある。
 たとえば、お金持ちのタワーマンション住まいだとか、誰もが振り返る美形だとか。
 大好きでずっと片想いしていた憧れの相手だとか。
 そんな相手があたしのことを好きだと言ってくれたら、心が弾んで涙がでるほどに嬉しい。
 けれど、世の中には分不相応というものが存在していて、目の前の彼は白崎笑留《しらさきえる》には、別世界の人だ。
 世の中のヒエラルキーのトップにいるような男で、そもそもこうして気安く話をできる相手ではない。
 モデルですかと問いたくなるほどに長身で、百五十五センチのあたしとの身長差は三十センチを超えている。
 この国の男性の平均身長は百七十。歩いているだけで、人目を引く。それが中性的な美しい顔立ちをしていれば尚のこと。
 彼の父方の祖母にフランスの血が入っているらしいが、それも頷けるほどに高い鼻梁に、色素の薄いサラサラの髪、長い睫毛。精巧に作られた人形みたいに透き通る肌をしている。
 それだけならまだしも、彼の父親はあたしの働く会社の重役だ。いくつもの会社の役員や理事を兼任している、いわゆる資産家でありセレブリティーな人物。
 住んでいるタワーマンションがテレビで何度か紹介されていた。生活感のない、ホテルのような部屋だった。
 漫画や小説の主人公は、だいたい可愛い。読者がその世界に引き込まれるように、愛されるキャラクターだ。
 じゃあ、あたしはどうなんだろう。そう考えると、あたしなんて絶対にヒロインにはなり得ないと思う。自愛的でもなければ誇りに思える矜持もない。ただ、流されるままに生きているような感覚。
 そのうち、平凡なサラリーマンと結婚して、子どもは二人。もしくは出会いがなくて一生独身かもしれない。まあ、それも人生だろうと達観してしまえるぐらいには色々と諦めていた。

 でも、それでも──夢を見たっていいんじゃないの?
 平凡だって、誰かに愛されて幸せになる権利があるって信じたらダメ?

 不釣り合いだとわかっている。けど、あたしは誰になんと言われようと彼の隣にいたいのだ。
「あたしで……いいんですか?」


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