「やっぱり私は…ナオには釣り合わない。何もできないダメな人間なんです。
ナオの結婚相手に私はふさわしくない」

「何言ってるんだ。突然あんな場に連れ出されて緊張するのは当然のことだ。
悪かった。俺がもっとフォローするべきだったんだ」

ナオの胸の中でかぶりを振る。ナオは全く悪くない。

私の失態のフォローばかりさせて申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

「明里、今日のことは気にしないでほしい。
周りの目なんてどうでもいいんだ。
君が俺の大事なフィアンセであることに変わりはない。
…俺は明里を愛してる」


『愛してる』


ナオの言葉ひとつで、気持ちがすうっと軽くなっていく。

ワインに酔ったせいなのか、それとも気を張っていたせいなのか、急に力が抜けた私はそのままナオの肩に頭を預けて目を閉じた。

「ナオ…ありがとう」

「…このまま少し眠るといい。疲れただろう。
頑張ってくれてありがとう、明里」


私の髪をやさしく撫でる手は、私の意識が溶けていくまで消えなかった。