「泣かないで」


優しい口調に少し悲しさを混ぜた声音が降り注ぐ。
涙で歪んだ世界にふと現れたのは私と同じぐらいの男の子。色素の薄いその子の髪は目にかかっていてミステリアスな雰囲気を醸し出す。


「泣いてないもん」


「涙が勝手に出ちゃうなら、上見てみて?…空見て」


「そら?」


見上げると嫌なぐらいの快晴のせいで満天の星だった。

こんなにも泣きたい気分なのに綺麗だと感じる器官が正常で不思議な気分だ。


「星はヒーローだよ」


男の子は空に手を伸ばす仕草をした。


「闇に射す光。僕らの道しるべ」


単に物知りだなって感心していた。
言葉が洗礼されている。


「お月様もそうだよ?」


「お月様はたまにいなくなっちゃうから」


寂しそうに笑った。