目黒駅前は会社帰りの会社員で行き交っていた。これから家に帰る人、飲みに行く人……。居酒屋を勢いよく飛び出してきたのはいいけれど、彼がどっちに向かったのかそれすらわからなかった。昔から考えなしで行動するのが私の悪い癖。

けれど、まだ剣持部長が店を出てからそんなに時間は経っていないはずだ。だからきっとこのあたりにいると勝手に信じてきょろきょろとあたりを見回した。酒に酔っているせいもあって視線を動かすたびに目が回りそうだった。

みんな待ってたのに! お金だけ払って帰るなんて! 絶対とっつかまえて何考えてるのか聞き出してやるんだから!

「おい」

拳を握り締めてギリギリと歯ぎしりしていると、不意に後ろから声をかけられた。こんな時になんだ? と振り返ってみると……。