「花火大会?」



7月。


今年は空梅雨なんて言われている私達の住む地域は、7月に入った途端すっかり猛暑に見舞われていた。


朝から人でごった返したむさっ苦しい電車に乗って、ギラッギラの太陽の下歩いてきた私は、教室に着いた時にはそりゃもう汗だくで。


こんな時ばかりは、車で送り迎えをしてもらえるお嬢様生活ってのを素直に受け入れとくんだったな…なんて元も子もないことを考えながら、自分の席で下じきをうちわがわりにしていた。


そんな私の元に、池崎さんが花火大会の開催日が書かれた一枚のチラシを持って颯爽とやって来た。


「そうなの!毎年夏休みに入る少し前にあるんだけど、西園寺さん知らない?」


「んー。聞いたことあるような、ないような……」



花火大会か……。


そう言えば、小学生くらいの時にお母さんにワガママを言って、近くで行われている花火大会に連れて行ってもらったことがある。


確かその時は滝本と滝本のお母さんも一緒で、会場のすぐ脇に並んでいる屋台でりんご飴を買って食べた。


まだ小さかった私達は夜に外出なんてなかなか出来なかったから、滝本と二人で妙にはしゃいでたのを覚えてる。


提灯の灯りとか、屋台から上がる匂いとか。


夜空に大きく花開いた色とりどりの打上げ花火とか。


楽しかったなぁ。