長い年月を経てかなり年季が入ってはいるものの、家具などが殆ど置かれていない生活感皆無な広々とした和室には、廊下側に立ち並ぶ障子から朝日が差し込み、緩やかな明かりが室内を照らしていた。

そんな中、唯一置かれている天然の一枚板で造られた大きな座卓を挟み、上座には桐生、門脇、立花が。そして、三人に向かい合うように下座には紅葉と圭が座っていた。

紅葉と圭は横に並びながらも二人とも改まるように正座をしている。その様子はまるで叱られた子どもが反省させられているようにも見えなくない。

実際、紅葉は反省してもしきれないといった半ばパニック状態であった。

何より最初、何故自分はこんなところにいるのか。状況が理解出来なかった程だ。


それは少し前の出来事に(さかのぼ)る。



早朝に立花から連絡を受けた圭は、眠ってしまった紅葉を保護しているという桐生の家を教えて貰い、スマホの地図を片手に慌ててやって来た。だが、その家の尋常でない佇まいに思わず尻込みしたものの、何とか勇気を振り絞ってその門をくぐったのだった。

そんな圭の来訪を知り、立花はすぐに家の中へと招き入れた。

これは余談だが、立花はこの松竹組とは深い間柄で、その付き合いは実は長い。父親が松竹組の顧問弁護士を長く務めていることから、昔から何かと一緒に連れられて来ては、歳の近い京介と一緒に行動することが多かったのだ。

立花自身、そのことに何の疑問も感じることなく京介とは長年良い関係を築いている。その為、いつでもこの家を顔パスで出入り出来るし、将来は父の後を継いで京介の役に立つつもりで弁護士を目指していたりする。