フー、やっとどこかのへ行きやがった。
なんて、いまいましいんだ、人間って奴っあ。
奴らは何を食って生きてやがるんだ?
たまに夕焼け色の水をのんじゃあいるが、あんなもんであの体が持つんかねえぇ。
狩りをしなくても、生きて行けるなんざぁ羨ましい限りだぁ全く。
「この、怠け者め!」
少しゃあ、蟻の奴らを見習えってもんだ。
蜘蛛は蟻達の行列を見下ろしながらそう思った。

それにしても、蟻の奴ら、本当によく働くよな、この暑いのに、せっせ、せっせと毎日、毎日とよぉ。
てめえの何倍もある食いもん、運びやがって、その場で喰っちまえばいいのによぉ。
ありゃあきっと、おっ恐かねえ大食いの親玉が居るんだろうな、あの穴ぼこの中によぉ。
「おーい、蟻ん子、そんなに働いておもしれぇか?ちったあ、休んだらどうなんだ、休め休め」
「ふん、蜘蛛のオヤジよぉ、お前こそずっとそんな所でじっとしていて、何がおもしろいんだい?いつも同じ所に網張ったって、あんたの罠はこの辺じゃあ皆知ってるぜ、お前の罠にかかる奴は居ないさ」

蟻の中の独りが、蜘蛛を見上げて言った。
そして、今度は別の蟻が、行列を外れると、蜘蛛を見上げ、後に続いて言った。