その日も雨が降っていた。
夕刻になり雨脚も強くなった外の景色を、何をするまでもなく眺めていたのだ。
 父が亡くなり柚莉花はひとりで別荘に来ていた。
 父は名家出身で母との結婚を反対され駆け落ち同然で家を出たという。
 今回のことで父の実家と母が遺産のことで対立し、話し合いをしているのだが、子供は邪魔だなと避難と称して一人でやって来たのだ。
 平日のため別荘地には人は殆どいなく、出掛ける気分にもならないため、数日間を誰とも話す機会さえなく、たったひとりで過ごしていた時。
 雨に降られて向かいの建物の軒下で雨宿りをしていたのが、彼だった。
 深く考えることなく自然に彼の元へ足が向かっていた。
「…うちで…雨宿り……する?」
 突然傘をさして現れた彼女に驚きながらも、
「ありがとう」
と、彼は笑顔を向けた。
 雨は止む気配を見せず降り続いている。
 二人分の夕食を作り、一緒に食事をし…すべてを降りやまない雨の所為にして過ごした。
 他愛のない話題から、お互いの今の状況まで。