アラシとナギは張り切って台所へ向かいました。


ナギはキャベツをしんなり茹であげ、芯の厚いところをそいでおきました。
その間に、アラシは玉ねぎのみじん切り。


「ああ、涙が出ちゃう」


ぼやきながら涙を拭くと、ボウルに玉ねぎ、合いびき肉、パン粉、卵、ナツメグ、塩、こしょうを入れて、手際よく混ぜていきます。


ねちょ、ねちょっ、みちょ、みちょっ。
ねちょ、ねちょっ、みちょ、みちょっ。


とても滑らかで、綺麗なタネです。
それをナギが茹でたキャベツに乗せて、くるくるっと綺麗に巻き込んでいきました。
あの小判の包みも綺麗でしたが、アラシたちのロールキャベツもそれはそれは綺麗に巻かれていきます。


ナギはトマトソースの支度をしながら、声をかけました。


「お兄ちゃん、当たりを忘れないでね」


「もちろんだよ」


アラシは最後のロールキャベツの中に小判を一枚ねじこみました。


「これでよし」


そしてトマトソースの入った鍋にロールキャベツを並べ、コトコト煮込みます。


「さあ、あとはお殿様が来るのを待つだけ」


一息ついたアラシに、ナギが言います。


「ねぇ、お殿様に肘置きと座布団を用意しなくていいのかしら?」


「いいんだよ。座布団はともかく、うちはお殿様だろうが王様だろうが、肘置きにもたれながらご飯を食べるお客さんなんて御免だからね」


アラシはけらけら笑い、「どんなお殿様だろう。ワクワクするね」と耳をパタつかせたのでした。