「宮ちゃん、昨日はごめんなさい……」

「何言ってんの、私こそごめんね」

入院中は翌日まで目が覚めず、お見舞いに来てくれていたらしい三人にお礼が言えていなかった。

安静のため一日入院して、そして今日のお昼から登校したというわけだ。

宮ちゃんは一番に出迎えてくれて、一日中私を心配し続けた。

「無理せず、休めば良かったのに」

「平気だよ。それに、宮ちゃんに会いたかったの。あの時も、この前も、いつも守ってくれてありがとう」

「ううん……本当に、無事で良かった」

彼女は、ぎゅっと私に抱き着く。心配そうに上目遣いに見上げる彼女が可愛くて、へらりと笑う。

隣の校舎からは、相変わらず派手な音が聞こえてくる。

彼女もいつも通り、呆れたように見遣るだけだ。

ふと、向かいの校舎の屋上を見上げてみた。

(……いない、よね)

最初は、名前も知らなかったのに。

あの低いフェンスに凭れ掛かっていた、後ろ姿。

いつの間にかこちらを見て、手を振っていたっけ。

その手と繋いだ、自分の右手を宙にかざす。

彼の手は、私の手を包み込んでしまうくらい大きかった。そして、とても優しかった。

会えない一日が、こんなにも寂しくなるなんて知らなかった。

右手を下ろして、また屋上を見上げる。

授業が始まっても、屋上の開かない扉をずっと見つめていた。