光は結局、4日間もわたしを豪邸から出させてくれなかった。


月、火、水、木と、わたしはずっと寝たっきりの生活を送った。


こんなに長い間何もしないで過ごした期間は生まれて初めてかもしれない。



だけど光自身にはあまり会わず、なぜだか柊さんがわたしの看病をしてくれた。妙に医学用語に詳しいのが変な印象を残したし、


柊さんは相変わらずすごく苦手だったけれど、家に帰らなくてよかったと案外ホッとしていた。


こんな状態じゃきっとまたどこかで倒れていたかもしれない。


柊さんも出かけてしまうと、一人っきりでベッドに横になっていることしかできなかった。そんな時、わたしはぼんやりと天井を見上げ、物思いに耽っていた。


光はどうやら家の中にはいたらしい。それはわかっていたけれど、姿をあらわすことは一度もなくて、逆にどうしてこんなに物音立てずに過ごせるのか…いや、どうして同じ家で一度も顔を合わせることがなく生活できるのか、やはり不思議でならなかった。

お医者さんの言う通りちゃんと薬も飲んで、包帯も変えた(もちろん自分で)。熱も収まり、今は微熱まで回復した。


ただ、バイトを結構休んでしまったことが一番の後悔かもしれない。


また、親には勝手に連絡を入れたらしい。(どうやったのかは聞かないけど、怖いから)それが癪に触って少しだけ不安だった。


「柊さ、」

「だからみーさーきって言ってるでしょー。」

「岬さん…」

「み!さ!き!」


子供みたいに駄々をこねるのは、ただいま話し相手?にきているらしい柊さんこと岬。最近髪をもっと明るく染めて、いよいよチャラ男オーラが半端ない。


苦手。



「岬…」

「そう、よくできたね。」


もう二度と会わないと交わしたはずが、目の前にいるのは変な感じだ。


「あの…」

「あ〜!敬語やめてね!」


これもきっと100回目くらいに言われたと思う。

難しいんだよね…なんか、慣れてないし。


「うん、で?」

「わたしのためにどうしてここまで…?」

「んー、光がそうしたいって言ったから?」

「え…光が…?」

「そ。」

「どうして…?」

「あいつ見かけと違って、昔から善人だから。」

初めて聞く少し真面目な雰囲気の柊さん…じゃなくて、岬さん…ていうか、岬。

「今までも何人も家きたことあるんだよ。」

「あ…そうなんですか…」


どうしてこんなにがっかりしている自分がいるんだろう。


「もしかして、惚れちゃった?」

「へ?」

「だめだよーみんな惚れちゃうんだもん、あいつに。」

「ですよね…ていうか、惚れてないですけど!」

「敬語!」

「………」

「うん、まあ、惚れないでね。」

「?」

「惚れたら、縁切られるから。」

「え…。」

「あいつそういうとこ厳しいから、ね。」