ガンガンと耳に響く音楽を感じながら、わたしは油っこいフライドポテトをテーブルに置く。



怒鳴り声に似たような張り上げられた声とミュージックは悪夢みたいに大気を震わせる。



耳というよりは、心臓にどんどんとうるさい。



注文されたメニューを確認しながらチラッと顔を上げれば、40代後半に見える男性が立っている。



声を張り上げて歌う男性の歌声は決して上手いわけではない。



それでも夜中のカラオケ店に来るような人は決して良い人生を送っているとは思えないから、なんだか同情する。



歌手なんだとしたら話は別だけど。



「失礼します。」



と言って、わたしはキンキンする耳を塞ぎたい衝動を抑えながら、カラオケBOXの個室を出る。



「七瀬ー、昨日みたいに遅れんなよー。」