目覚めるとそこは、見知らぬ豪奢な部屋の中でした。

数秒目だけ動かして、周りを見回しつつ考えます。
あれっ? 
昨夜はレイモンド様と食事をして、貴賓室に上がって何本かヴィンテージワイン空けて……、その後私どーしたんだっけ?? 
あれれ全然思い出せないっ!!

とその時

「エセル」

ん?
甘みを含んだ声で呼ばれて咄嗟に右を向き、目の玉が若干淵から飛び出しました。

「ここここ侯爵様っ!?」
脳みそも言葉もニワトリになった私。

「おはようエセル」

隣で頬杖をつき微笑しながら、私を見つめるレイモンド様。
少年のように髪をしどけなく下ろしているので、別人のようです。

何でこの人が同じ寝台にいるの? 
しかも何で上半身裸? 
何で呼び捨て? 
そもそも一体ここはどこーーーーーっ!? 

パニックで固まっている私を気遣うように、レイモンド様が指の背で私の頬を優しく何度も撫でました。
何でそんなに親密なのーーーっ!

「侯爵様、服を、服をお召しになって下さいませ」

握りしめていた上掛けを手繰り寄せ、自分の目を覆おうとして恐ろし過ぎる感触に気が付きました。

素肌の上を柔らかな布がするする滑るこの感触は……
ぎぃ゛やぁぁーーーーーっ、私、全身裸だしーーーーーっ!! 
こここれって私、レイモンド様と一夜を共にしたってことですかあ!?