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俺の母親、黒田実可子(くろだみかこ)は27年前、堂園一茂議員の秘書として雇われた。

『黒田実可子と申します。よろしくお願いいたします』

『ああ、こちらこそよろしく。黒田君』

母から見た堂園の第一印象は目が輝いていて、政治への情熱が溢れた人だった。

秘書として関わるようになっていくと第一印象通りで、政治への熱い情熱を語り、”いつか自分が総理大臣になる”といつも夢を語っていた。

国民に支持される堂園。
まわりを引っ張っていく存在であるが、部下は見下さず、決して信念を曲げない真っ直ぐな彼。

この人はきっと総理大臣になる。

母はそう確信していたようだ。

そんな堂園に母は惹かれていき、二人はいつしか恋人関係になっていた。

『実可子、結婚しよう』

そう言われたこともあったという。

『この先ずっと、堂園さんについていきます』

母は堂園の言葉を信じていた。
堂園と自分は近いうちに結婚すると思っていたのに。

この男は母を裏切った。