玄関を開けると冬の匂いがした。



クリアな世界の匂いだ。



僕はツンと刺すような冷気を頬に感じながら、朝の町を歩き始める。



朝といっても、時刻はすでに10時を過ぎていて、見方によっては昼ともいえた。



普通なら二限を受けている頃だな、と僕は他人事のように思った。



でも、高校へは行かないと決めていた。



僕はいわゆる不登校というやつだった。



不登校といっても別に、誰かにいじめられているとか、嫌いな人間がいるとか、そういうわけじゃなかった。



ただ、学校へ行く意味がわからなかった、という、それだけの話だ。



子どもの戯言といわれても、いい返す言葉もない。



いい返すつもりもないけれど。