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「お姉さんたち綺麗だね〜。
ん?俺? 俺はねえ、あいつらの付き添い的な?」
ひらひら。風に煽られた桜の花びらが、舞う。
薄紅色の小さなそれは、ただ揺蕩うように。
「俺だって男連中と来るよりお姉さんたちみたいな美人と遊びたいよ〜。
あ、連絡先交換しない? 今度休みの日にさ、空いてたら連絡する。遊びに行こうよ」
わたしの視界を横切る。
チッと舌打ちしそうになったけどぐっと堪えて、「ねえ」とこぼれた声は意外にも低かった。
そのせいで数人がびくりと肩を震わせる。
……あんたたち、わたしに怯え過ぎでしょ。
「あの男は一体何してるの?」
4月中旬、とある週末。わたしたちは、霧夏の溜まり場そばにある広い公園で、約束していたお花見を実行した。
だがしかし、あの男はどう見たってわたしたちをそっちのけで女の子たちをナンパしてる。まあ、衣沙が"行く"って返事したのが奇跡みたいなものだけど。
「なにって……口説いてますよね」
さおが、ふっと息をつく。
それからわたしを見たかと思えば一瞬ぱちっと瞬いて、おもむろに手を伸ばしてきた。
「え、なに……?」
「髪。桜の花びらついてます」
「うそ。取ってもらっていい?」
彼の手が、そっとわたしの髪に触れる。
優しく撫でるような感触を与えて離れたかと思うと、彼の指先には桜が乗っているのだけれど。
花びらが一枚だけついていたのかと思いきや、それは花の原型をとどめたまま。
……どうやら落ちた際に、ピンポイントでわたしの頭に乗ったらしい。