緊急外来の待合室でひとりで待っていると、嫌でも先ほどの情景が頭の中で浮かんでは消え、消えては浮かんでいく。

怖かった。

突然現れて身勝手なことを言われて。それにナイフで君嶋くんを刺そうとするなんて――。

思わず両手で自分の身体を擦った。

あれから君嶋くんが電話を終えると、程なくして警察と救急車が到着した。

男性は警察に確保され、君嶋くんと私は救急車に乗って勤め先である総合病院に運ばれた。

すぐに君嶋くんの処置が始まり、私は待合室で待っているわけだけど……。


ドアの先にいる君嶋くんのことが心配。

傷は浅いとか言っていたけれど、出血で服は赤く染まっていた。それなのに君嶋くんは私のことを守ってくれて……。

止まったはずの涙がまた溢れそうになり、天を仰いだ。

今は泣いている場合じゃない、そう自分に言い聞かせて必死に涙を抑える。

すると外から救急車のサイレンが聞こえてきた。次第に大きく聞こえ音が止まると、処置室のドアの先は騒がしくなる。

程なくして付き添いの家族が不安げな表情で待合室に入ってきた。