「雨だね」
「雨だな」
「真っ暗だね」
「朝から言ってたろ」

台風の影響で七夕の雰囲気にならない。
雨の止み間に窓を開けて空を見上げるけど、輝く星の欠片すらも見えない。

「今年は会えないのね」
「は?」
「織姫と彦星」
「あぁ…」
「一年に一度の逢瀬がパアだね」
「んなわけあるか」

呆れたように「あぁ…」なんて返事したくせにソファーから立ち上がりながら全否定する。
近付いてきて背後から抱き締められる。

「でも天の川ないよ」
「雨雲で俺らには見えないだけ。空の上でちゃんと流れてるし一目はばからずイチャイチャ出来て今年は最高だろ」

なるほど、そういう想像も出来るのね…となんでもポジティブ思考の彼らしい。

それにしても後ろからあっち触りこっち触り、あっちこっちにチュッチュする彼にストップをかける。

「なんで」
「外から丸見えだから」
「シルエットが?」
「そう」
「雨降ってんだから誰も見てねぇし。空も眺めねぇよ」

言い切ってしまう彼の言うことが本当ならば空の上の彦星も織姫にこんな感じで迫ってるのかしら…と夢の欠片も無い想像をしてしまう七夕の夜。




…END