先週蹴られた肩の具合が心配だった。

「もうすっかりよくなったよ。ほら」

そう言うとシバケンは左肩を回した。

「よかったー……」

「俺は結構頑丈だからね」

日頃の公務で鍛えているシバケンは、私服でもがっしりした体つきなのがわかる。安心して笑顔になる私にシバケンも笑顔を見せた。

劇場に入り座席に座るとシバケンは私の顔を見た。

「観たい映画は俺が決めちゃって本当によかったの?」

「はい、大丈夫ですよ」

正直この映画に興味は持てない。単純にシバケンが好きなものを知りたかったから合わせたのだ。実は興味がないことを悟ったのだろうシバケンは何かを言いたそうにこっちを見たままだったけれど、劇場内が暗くなると前を向いた。





映画も後半になるとストーリーに予想以上に引き込まれてしまった。見せ場のアクションも凄かったけれど、親子の愛というテーマも盛り込まれていて、ラストに向かうにつれて自然と目が潤んできた。最低な父親に反発していた主人公。けれど父親が本当は英雄で、主人公を守るために奮闘していたと知ったシーンでは涙が頬を伝った。小さく鼻を啜る音にシバケンが暗闇でこちらを向いた気配がした。

「大丈夫?」

耳元で聞こえる声に映画の内容が一瞬飛んでしまった。私の顔のすぐ近くにシバケンの顔がある。耳だけが敏感になる。

「泣いてる?」

「……感動しちゃって」

主人公に感情移入してしまったのだ。感動を推した映画ではない。私以外泣いている人がいる様子もないのに泣くなんて恥ずかしい。けれど一度潤んだ目はもう戻らない。

「可愛い……」