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今日も今日とて父上は昼食を忘れていき、私が母上に押し付けられて登城する。

父上いわく『王弟殿下に、我が家にお越し願うなど言語道断。だが、あの方がこうしようと思ったら、昔から止められん。だからといって、王族が軽々しく城を出るのは推奨しない。なにかがあってはならんのだ』らしい。

王族には親衛隊もいるから、警護はしっかりしているはず。

でも、いくら平和な国だからって、なにが起こるかわからないのも世の中だし、城のなかにいてもらった方が護りやすい。

わかるよ。わかるんだけど、だからってね、娘を利用するなっていうか。

もちろん多忙なはずの、近衛兵団長であるウォル殿下がこれない日もあって、そういう時は、彼の親衛隊のルドさんが城門の前に立っているという徹底ぶり。

父上に昼食を渡したら、そのまま殿下のもとまで普通にエスコートされる。

そんなわけで、内宮の廊下を歩きながら、隣を歩くルドさんを見上げた。

「……お仕事中にすみません」

「これも仕事ですから」

相変わらずあっけらかんと明るく言われて、頭を抱えたくなるけども。

「こちらとしては、助かります。殿下は昔から急に雲隠れすることがありまして」

「はぁ……」

「あなたが城に来てくださる時は、あなたを探し回っているだけですから探しやすいですし。あなたと一緒であれば、こちらを出し抜いてまで隠れませんから」

……ウォル殿下。王族っていうより、人としてはかなり不可思議なんだな。