「え?大学の講義ですか?」



このあいだの誘拐事件でできた頰の傷が治り始めた頃、宇都木社長に呼ばれて私は出向いた。
重苦しい雰囲気の中言われたのは、幸子お嬢様が通う大学で大切な講義があるらしい。

しばらく落ち着くまでは休学という形をとっているらしい幸子お嬢様だけど、どうしてもその講義だけは受けないといけないらしい。



なんでも、最後に学生代表の挨拶をしなくてはいけないんだって。



「そんな、挨拶なんて…」


そもそも幸子お嬢様って大学生だったんだ。
そんな事も知らなかった。



「わかっている。そこまで頼みはしない。そんなことができると期待もしていない」




はっきりとそう言い切られ私は言葉を飲み込んだ。
そりゃあ、私はバカだし人前でお上品になんて話せないけど。
そんなはっきり言わなくてもいいのにと思う。



鹿島さんにしても、社長にしても、私への当たりがひどいんじゃないかしら。


庶民とは相入れないんだわ。