「んっ…。」

ここどこ?あれ?どうしてこんなところに…。

「わぁー!起きてるぅー!」

桐本美希が勢いよく顔を覗き込んできた。

「起きましたか。調子はどうだ?」

「お陰様で」

副総長様は体調を気にはしているが…

「なにか聞きたいことでもあるって顔ね?」

「あれれ?バレたかぁー。起きて早々悪いね。」

「で、総長様は何を聞きたいの?質問は?」

「じゃあ、本名は?」

「また聞くの?それは無理。断固として拒否よ。」

「家族は?」

ぶっきらぼうに聞いたのは、西ノ宮龍生だ。

「家族?そんなのいない。」

「えっ?!いないの?両親2人とも?」

私の言葉に先に反応したのは桐本美希だった。

「そう。ずっと一人よ?だから?」

「だからって…。怜奈ちゃん。」

「他の質問は?ないの?」

「さっき、どうして呼吸困難になったんだ?」

私は、思わずポーカーフェイスを崩した。どうして副総長にバレたの…。

「も、元々喘息持ちで!どうしてわかったの?」

「病院の医院長の息子だから。」

「へぇー。そうなんだね。」

「それだけ?じゃあ、もういいよね?9時だし帰るね。」

「あ、ああ。」

バタンッ

急いで出て、倉庫の前で立ち尽くした。

「やばい…。」

「そうだねー。あれじゃ、バレバレだよねぇー?」

声のする方に振り向いた。そこには総長様がいた。

「ど、どうして?!」

「君に言いたいことがあってね!」

「な、なに?」

「ねぇ、水神の姫になってくれない?」

「はぁ?嫌よ。桐本美希がいるじゃない。」

「そうだね。あの子も姫。君はまた別、悪い話じゃないだろ?」

「守られるのが嫌なの。帰る。」

そそくさと倉庫を後にした。

部屋に戻りパソコンを開いた。

「明日から久しぶりに鬼退治でもしようかな?」

悪いことをしている暴走族を潰していく鬼。それが私。

鬼には知れ渡っている情報が結構ある。

まず、服装だ。背中に般若の顔と桜の絵がプリントされた赤のパーカーを着ていて、フードを深くかぶっている。それと、マスクをしていて顔はバレていない。

だからか、男か女かわからないと言われていた。しかし、最近は女じゃないかと言われている。

原因は私が食べなさ過ぎて細すぎるからなのだそう。

まぁ、もう女としてやるけどね。明日から。

あと、噂になっているのが大量のピアス。

実際は大量と言う量ではない。耳たぶは4個軟骨は2個。両耳とも同じ数だ。

両耳とも一つ目は鬼のピアス。その他はルビーのピアス。

最後は、髪だ。普段は黒のセミロングのウィッグをつけているが、本当の髪は腰まで長いウェーブヘアーで、色が薄い赤色で毛先が真っ赤。

これで、鬼の知れ渡っている特徴はすべてだ。

今日のリサーチは完了!明日から本格的に急がないとだめだ。

今日は、寝よう。


ピピピッ.ピピピッ

「んー!」

目覚ましが鳴り、重い体を起こした。

今日から大体1か月ほどで死ぬから、頑張るしかない。

急がないといけないが、とりあえずは学校に行かないと。

朝食はイチゴ牛乳でいいか!飲みながら行こう。

学校では、いつも通り放課後まで授業を受けて放課後からは水神の倉庫に向かった。

水神の倉庫前…

いつもと同じく、下っ端の人たちがいて挨拶の嵐だった。

倉庫の奥の方の階段をのぼり幹部の部屋へ行く。

ガチャ

「来ました。」

私がドアを開けると一斉にみんなの目線がこっちに向いた。

「今日は、話があって…。」

「話?また暴露?」

チャラい奴が興味津々の顔で聞いてきた。

「いいえ。違うわ。今日から帰宅時刻を6時30分にしてもらえないかと思って。」

「どうしてー?家に誰もいないんでしょ?」

「そうじゃなくて、毎日じゃないけど用事があるの。」

「そうなんだー。分かった。いつまで?」

「んー。分からないわ。」

「そうなんだ。じゃあ、今日からね。」

総長様の許可は得た。今日から活動開始だ。

ドタドタドタッ!バンッ!

「みんなやっほー!あぁ!怜奈ちゃんがいる!お菓子食べる?!」

「ううん。いらないよ。」

ドタバタと桐本美希が入ってきた。

しばらく、ボーッとしていると何かを思い出したかのように桐本美希が声を上げた。

「そういえば…。怜奈ちゃんってみんなのこと名前で呼んだことないよねー。」

そらそうだろう。名前教えてもらってないし知らねーよ!

「いや、呼ぶも何も名前知らないし…。」

「えぇ?!うそっ!誰も自己紹介してないの?」

「あぁ、忘れてた。」

桐本美希の驚きに副総長様が冷静に忘れていた宣言をした。

「じゃあー、改めてしますかっ!」

総長様の提案に素直にみんな従った。

「俺は、総長の絹岬葵衣。葵衣って呼んでねー。」

チャラくはないけど、言い方が雑だ。

「俺は、副総長の葛木旬。旬でいい。」

最近、俺様感がにじみ出ている気がする。

「俺は木元雅也。雅也でいい。」

チャラ男…。

「西ノ宮龍生。龍生と呼んでくれて構わない。」

こいつ無口だな。葵衣より総長っぽい。つうか、あまり話したことなくね?

「じゃ、じゃあ!つぎ私!桐本美希。気軽に美希って呼んでね!
あっ!あと、みんな2年生だから!」

桐本美希が早口で話し出した。

「そのくらい知ってる。リボンとネクタイの色が違ったから。」

私たちの学校はリボンやネクタイの色で学年が判断できるようになっている。
1年は赤、2年は青、3年は緑だ。

「まぁ、そうだよねぇ!」

「あっ、美希帰ります。葵衣失礼します。今日はありがとうございました。」

時間通りに帰る。早くこの場から去りたかった。

下っ端の人たちに挨拶されながらそそくさと家に帰った。