「はああ……」

「アンタ、そんだけ大きいあくびしてると幸せ逃げるよ?」

「もう逃げてるからいいんです!」



「はあ?」なんて言いながら舞がカバンを持つ。

朝、屋上に連行されて、教室に戻ったやいなや入学早々ながーいホームルーム。間違いなく今日1番疲れているのはこの私だと思う。



「でもアンタの隣もとんだ困ったクンよね」



舞にも今日あったことを言ってない。
……というか言えない。

だっておかしい。

西条郁也は見ての通り、入学早々他学年の女子までもが見に来るほどのイケメンなのだ。いや、イケメンっていうかもはやうつくしいっていうか。

そんな(たぶん)学内イチのモテ男クンと私が付き合っているなんて____あり得ないにも程がある。


「あはは……ホントね」


当の郁也くんは、あの後学校をサボったらしく、教室には戻ってこなかった。

クラスの女子と、わざわざ西条郁也を見にこのクラスにやってきた女子たちはけっこう凹んでたけど、私からしたらサボってくれて有難うって感じだ。


付き合うとか言って顔をあわせるのも気まずいし、何より……ヘタに西条郁也に関わるのはかなりアブナイ。

だって、女子たちのやっかみほど面倒くさいものはないし。