右隣からあがった声。

 バサバサと睫毛が羽ばたき、いつも机の上がお菓子やジュース、メイク道具でごちゃごちゃしている、所謂ギャルの須加さんがダルそうに手を挙げていた。

「おい、須加……そういうのは最初に言いなさい」

 挙げた手をさっさと下ろした須加さんはネイルされた爪にしか興味がない様子で、笹岡先生の話なんて耳に入ってないようだ。

 若干、苛立った表情を浮かべた先生は、しかしそれ以上のことを言わずに授業を再開させる。

 私は気づかれないようにほっと安堵のため息をつき、それから須加さんの方に目を向ける。

 彼女は手鏡を取りだし、念入りに自分の顔を覗きこんでいた。

「須加さん……あの、ありがと」

 そんなに喋ったことがないし、正直その派手なメイクと気怠い態度であまり人を寄せ付けない雰囲気を出している須賀さんに緊張してしまうが、助けてくれたお礼は言いたかった。

 ……変なあだ名が付けられていたことに戸惑いはあるものの。