「やっべっ!!」


突如目の前から上がった悲鳴に、条件反射のように顔を上げた。
見れば向かいの席の徳松さんが中腰の状態で顔を真っ青にしている。

「…徳松さん? どうかしたんですか?」

頭を抱えたままこちらを向いた彼の顔は、今にも泣きだしそうなほど切羽詰まって見えた。

「…これから持って行く資料、訂正があるのをうっかり忘れてた…」

「…え?」

「松河技研に提示したプレゼン資料、あれのコスト見積もりの一部だけ修正する必要があっただろ? 頭の中ではちゃんと理解して修正後の数字でデータも作成したんだが、肝心の資料だけ修正するの忘れてた…!」

「あ…」

「水谷に伝えなきゃとは思ってたんだけど、別の案件にかかってるうちにすっぽり頭から抜け落ちてた…」

掠れた声は震えている。

「修正自体はさほど時間はかからないけど、もうすぐ出ないと間に合わねぇ…!」

喋れば喋るほど顔面蒼白になっていく姿は見ていて気の毒なほど。

営業は信頼関係が何よりも重視される。取引先に余裕をもって行くなんて事は当たり前で、万が一にも遅れるだなんて論外も論外だ。


「…あの! その件なら大丈夫ですから!」

「…え?」