「なんでこんなことになったんだっけ…」

鏡に映る自分を見つめながら出た溜め息はもう何回目だろう。


結局、あれから強制的に連れて来られたのは____

まさかの課長の自宅だった。

それに気付くなり顔を真っ青にして回れ右をしたけれど、それすらも予想通りだと言わんばかりに、あれよあれよと実に手際よく家の中へと引き入れられてしまった。
そうして入るなりタオルやら着替えやらを渡され、とにもかくにも風呂に入ってあったまってこいと、またしても脱衣所へと押し込まれて___今に至る。

確かに今の私は見るも無惨なほど酷い有様だし、もしも温まらずに出たことがばれてしまったら、今度は「俺が入れてやる」とでも言い出しかねないと、激しく戸惑いながらも最終的に彼の言葉に従うことにした。

…のだけど…

「おかしい…どう考えてもおかしい…」

待ち合わせ場所に行くつもりなんてなかったのに。
百歩譲っても、タオルを渡して文句を言ったら速攻で帰るつもりだったのに。


だというのに、どうして私は課長の家でお風呂に入って、挙げ句の果てに彼のスウェットなどに身を包んでいるのだろうか。