《萩花side》



「葛城さまのお嬢様ですか?
本日は誠におめでとうございます」


「…ありがとうございます」



笑顔でかけられるお祝いの言葉たちにあたしも精一杯の笑顔で返す。


お姉ちゃんたちに慶さんが目覚めたことは聞いた。

あたしのメモを見ても知らないと言ってくれたらしい。


今日、あたしは婚約する。

お相手はIT企業の息子さんで
歳はあたしよりも五つ年上。


結婚するのはまだであたしが
もう少し大人になってからだそうだ。


用意された淡いピンクでふわっとしたフレアドレスを身にまとい、髪の毛もメイクも専門の人に朝からしてもらった。


だけどそんなの気分が乗るわけない。
頭の中に浮かぶのは慶さんのことばかり。



「萩花さん、楽しめていますか?」


「あ…はい」



婚約者の上田(じょうた)さんが
あたしのことを気にかけて声をかけてくれた。