血だまりの中に大好きだった母が倒れている。

もう既にぴくりとも動かない母の体に、銀色に光る刃物を刺して、抜いて、その刃物を持っていた父は最後に自分の首を切りつけた。

真っ赤な血が吹き出して、父は倒れた。

私は、ドアが開かれていたその部屋に入ることもできず、ただ立ち止まって光景を見ていた。

動けない。

(やめて、お母さんが死んじゃう、お父さん、やめて、やめて、やめて…!!)

声すら出てこない。

ぴくりとも動かなかった母が、顔だけをこちらに向けて、私を睨んだ。

『陽聡…どうして助けてくれなかったの…?』

「ごめん…お母さん…私、何もできなかった…ごめん、なさい…」

涙が頬を伝う感触。

「はぁ…また、夢…」

目を覚ました私は涙を拭った。

両親が無理心中してから一ヶ月。

大学から帰宅した私が見た光景。

傍観することしかできなかった罪悪感。

毎夜、夢で蘇っていた。