「璃愛最近ご機嫌ね〜」
「えー、わかるー?実は先輩と順調で♡」
「わー、また惚気が始まる予感〜」
「あのね、昨日も寝る前電話したし〜、今日はなんとこのあと一緒に帰るんだ〜♡先輩の家あたしの家と真逆なのに送ってくれるの♡」
「へぇ〜それはよかったねぇ」
「うんっ!そろそろ行こうかな…」
「結城、広報委員だったよな?これ各階の掲示板に貼ってきてくれないか?」
えー!?
よりによって今日…
「…わかりました」
仕方ない…
速攻終わらせてやる!!
「じゃあ葵!あたしいってくるね!」
「じゃあね〜」
あたしは先生からポスターを受け取りダッシュで教室を出た。
それがいけなかったんだと思う。
いくら急いでてもやっぱり廊下は走るものじゃないよね。
「きゃっ!」
廊下の曲がり角で顔面強打。
何かにぶつかった弾みであたしの身体は後ろに倒れかかる。
やば…!!
倒れる衝撃に身構えてぎゅっと目を瞑る。
「……っ!」
あれ…?
どこも痛くない…
むしろふわふわ?
それにいい匂い…
「大丈夫…?」
すぐ頭上から声がしてゆっくりと目を開ける。
「え…?」
倒れるはずだったあたしの身体はなぜか抱きしめられてる。
初めて見るイケメンの腕に。
「…ごめんなさいッ!」
勢いよく離れて体勢を直す。
反射的に熱くなる頬。
動揺して目が泳いでる。
は、初めて男の人に抱きしめられた…!
しかも先輩以外の人に…
倒れそうなところを助けてくれたんだから後ろめたいことなんてないよね。
ていうかこれはノーカウントだよね。
「あ、あの、ありがとうございました!それじゃあ…」
頭を下げてから再び走り出すあたしに後方から声がかかる。
「璃愛先輩!」
「え…?」
振り返るとさっきのイケメン。
"璃愛先輩"…?
「落としましたよ」
そう言ってイケメンが手にしていたのはブレザーのポケットに入れていたはずの生徒手帳。
ぶつかった弾みにでも落ちたのかな。
「さっきはすみません、先輩って知らなくてタメ口きいちゃって」
あ、このイケメン1年生か…
だから見たことない顔だったのね。
「ううん、助けてくれてありがとね、それと生徒手帳も」
伸ばした手が生徒手帳を掴んだ瞬間、その腕をぐいっと引っ張られ、気づいた時には再びイケメンの腕の中。
「先輩…一目惚れしちゃったみたいなんで…俺と付き合ってください」
あたしを抱きしめたまま耳元で囁くイケメン。
は……?
え、幻聴…?
「…信じられないかもしれないけど、俺本気なんで」
幻聴じゃない…!!!!
「ごめん!あたし、年上は絶対条件だから!それにあたし、彼氏いるから…!!」
イケメンの胸を突っぱねて腕の中から逃れるとくるりと回れ右をして猛ダッシュ。
ありえないありえないありえないっ!!!
"一目惚れ"ってそんなの絶対ありえない!!!!
だいたい初対面であんなことしないよ普通!!!!!
なんなのあの1年は!?