5月も真ん中くらいのその日、あたしはカラオケボックスにいた。



友達のサエとカンナは、あたしを見てちょっと戸惑っていた。



あたしはそれに気づいていたけれど、でもそれより何よりとにかくブルーで、結構、ヤケになっていた。



『女々しくて』を大声で歌って、そのあと、SHISHAMOの『夏の恋人』を歌った。

じめじめした部屋をぽかぽかした部屋にして、あなたはいっつもハーゲンダッツを買ってて……とにかく、替え歌にしたら余計に泣けてきて、腹も立ってきて、大声でわめいた。



サエもカンナも、あたしが狂ったんだ! とますます心配して、シャンシャン、耳の横でタンバリンを鳴らして励ましてくれた。



それがめっちゃうるさくて、あたしは部屋を出た。ついでにお手洗いに行こうと思って。



最悪? 最悪というか、悲しくて仕方がない。



たくさんのイヤな気持ちが喉のところまでやってきて、そのまま、唇から、あたしのことをどんどんブスにしちゃいそうなくらい。



もう涙も引いて腫れていないはずなのに、目元がなんだか熱っぽい。



だから、悲しいが最悪にならないうちに、あたしは落ち着きたかったからお手洗いに行ったんだ。






――そして、これこそがちょっぴりのミスで……、それをもっともっと上回るくらい、大切な選択だったんだ。