どくん、どくん。

高鳴る胸を軽く抑えて、野球中継を映した小さな画面に釘付ける。


全体を俯瞰するように映された球場のグラウンドの真ん中。
そこでは、エースナンバー〝18〟を背負った、その名の通りのエースが、ピッチャープレートを踏んでいた。

グラウンドのベース上には、誰一人相手チームのランナーはおらず、その状態はこの試合が始まってからずっと変わっていなかった。



『あとバッター1人で、宮嵜の偉業が達成されます!』



熱の篭った実況の声に、こちらも思わず手に汗を握る。
緊張感は、こちらも同じだ。

両手の指を絡めて、祈るように画面の中のエース──宮嵜篤斗(みやざき あつと)に視線を寄せた。



腰を折るようにして、キャッチャーから出されたサインを確認し、小さく頷いて体制を戻す。



そして、大きく振りかぶって、


運命の1球を……放った。



球威抜群のその球は、自信有り気に振られたバットを諸共せず、そのままの勢いで、



…………キャッチャーミットに収まった。



ワァッ!! っと球場中が沸いたのが、画面越しにも十分にわかって、実況の声も熱っぽく、煩いくらいだった。

スコアボードに表示された、0の羅列。



『宮嵜篤斗! やりました宮嵜篤斗!!
日米通算200勝目を、完全試合で締めました!!』



……それだけ、これは、素晴らしい偉業なんだ。

ノーヒットノーランってだけで、恐ろしいくらいの偉業なのに、完全試合なんて。