東藤司は当直明けすぐに車に乗りある場所へ向かっていた





ジャケットを脱ぎネクタイを外し30分ほど車を走らせ慣れた様子で停めたのは




『やすらぎの丘』と書かれたホスピスの駐車場だった




入口を入ると「お帰りなさい」と受付の年配の女性が司に笑いかける




司は「ただいま」といつもの習慣のようにこたえる





受付の女性とのこのやりとりももう長いこと繰り返している





司は歩みを止めずまっすぐに目的の部屋にノックをせずに入った





「ただいま。母さん」





部屋にはベッドがひとつ




そのベッドに横になるのは司の母だった