青井は、事務所の明かりをつけるとソファの上に寝た。猫のみきが、青井の方に来た。「今日も二人だけだな、みき」青井は、みきを撫でた。すると、事務所の電話が鳴った。
「はい、青井探偵事務所。」青井は、電話を取った。
「はい、じゃないわ。お前、わしに呼ばれた事忘れてる訳ないよな。」怒鳴り声がした時計を見ると12:50になっていた。やばい、こいつに呼び出されていた事を忘れていた。
「忘れてました。」「どつかれたいんか、こら。お前の事務所の前に車を止めてある。十分以内に来い」そう言うと電話は切れた。
青井は、テーブルの上に置いてある携帯と財布をダウンジャケットの内ポケットに入れて事務所を出た。霧山が言う通りベンツが事務所の前に止まっていた。霧山は、助手席に座って煙草を吸っていた。
「遅い、お前寝てただろ。髪の毛ボサボサだ。」霧山は煙草の火を消すと外に捨てた。
「普通にしゃべてください。二日酔いです。」青井は、運転席に座った。「で、なんです。」
「話は、後だ。車出せ」霧山は、住所を言うと目を閉じた。
「霧山さん。着きました。」車は、古いビルの前に止まった。霧山は目を開けると周りを見回した。
「ここか。」「で、話は」「今する。お前、探偵なら知ってるよな。つい最近起きた政治家殺人事件」「あー、あの人民党の賢山通(まさやまとおる)が毒殺された。」
2ヶ月前、賢山議員が実家のリビングで殺された。発見者は、被害者の妻、優子さんで殺されてから1日後だった。
「その犯人と思われてる人物が厄介なんだよ。二人いてどっちも組筋の人間。一人は、朝神会の直系団体、青浜組の組長青浜傘乃。組員30人シノギは、倒産整理。もう一人は、鍵山会幹部武石巻取。」霧山は、若頭に真実を探るよう頼まれた。