---迎えた合宿当日。


早起きした私はテキパキと準備を進め、春兄が到着するのを待った。


「藍ー?春人くん来たわよー」


下からお母さんの声が聞こえ、カバンを持って階段を降りる。


玄関には笑顔の春兄が立っていた。


「藍おはよう」


久しぶりに見た、春兄の笑顔だ。


嬉しくなり、私も自然と笑顔になる。


「春兄おはよう!」


「寝坊しなかったんだな、偉いじゃん」


いつもみたいに、私の頭に手をぽんと置く。


気まずかったあの時間が嘘みたいだ。


やっぱり、春兄と私は大丈夫。


この関係性は、永遠のものだ。



「また子供扱い!最近ちゃんと起きてるんだからね!」


「はいはい、じゃあ行くか」



家の前に停めてある春兄の車。


最後に乗ったのは、喧嘩してしまったあの日。


あの時のことが少し頭をよぎったけれど、ブンブン頭を振ってそれを消し去る。


私の大荷物を春兄は後部座席に置いた。




「さぁ、乗って」


「うん!」



お母さんが見送ってくれる中、車は動き出した。


「久しぶりだね、春兄の車」


「そうだな。あ、ペンケースさっそく使ってるよ。就活にも使っててさ、おかげで内定1社貰えたんだ」


思わぬ吉報だった。


その言葉に目を開かせ、自然と言葉が漏れた。



「え!おめでとう!!凄いね春兄!!本当におめでとう!!」


「あははっ。そんなに喜んでくれるんだ」


「当たり前だよ!私嬉しい!!!」


「…っ」



チラッとこちらを見て、すぐ前を向き直した春兄。


「やっぱり…藍の笑顔って落ち着くな」


「え?」


「最近見てなかったからさ。俺のせいだけど」


その言葉をすぐに否定した。


それは違う、春兄のせいなんかじゃない。


「春兄は悪くないから!!私が無神経だったの。私が子供すぎたから…だから、春兄に頼ってもらえるような、大人な女性に頑張ってなるからね!」


「藍…」