「お母さんおはよー」


「あら、休みなのに早起きね?」



春兄へのプレゼントが決まった週の土曜日、いつもの休日とは早い時間に起床した。今日はいろんなお店を回って、春兄にぴったりなペンケースを探すって決めたんだ。


「どこか出かけるの?」


「ん、春兄への誕生日プレゼント」


「あら、今年は何かあげるのね」


「無理やり聞き出したの!今までの感謝の気持ちも込めて、何か贈りたいなーと思って」


「そうね、あんたは春人くんなお世話になりっぱなしだものね」


うー、その通りですよ。親と子並みにお世話になってますよ。私がもっとしっかりすればいい話なんだけどね。


どうも昔からそういう関係性だったから、甘えちゃうんだよね。






朝食を食べ終え、身支度をして家を出る。


行き先は最寄駅から電車で40分くらいのところにあるショッピングモール。


そこに行けば欲しい物はだいたい揃うから、私は買い物の際にはそのショッピングモールによく出向く。


駅まで歩いていると、何やら口論になっているのか、少し揉めている男女が目に入った。



「…え?」


その人物をはっきり認識し、私は驚愕する。


あれって…春兄?



間違いない、男性の方は春兄だった。


じゃあ相手の女の人は…誰?




行き交う人がちらちら二人の方を見る。休日のこの時間、まだ人通りは少ない。



ここを通らないと駅へは向かえないのだが…





「いつもお前はそうやって、人のこと振り回して」


私は自動販売機の陰に隠れてその様子を伺った。春兄のあんな声、初めて聞いた…


怒ったところなんてみたことないから、眉間に皺を寄せ声を荒げる春兄を、少し恐いと思ってしまった。



「ちょっと協力してって言ってるだけじゃない!昔はすぐ何でもしてくれたのに、どうしちゃったのよ」


女性の方はとてもすらっとしていて、茶色の髪をゆるく巻いているまるでモデルのような容姿だった。春らしい白のロングスカートに袖がシースルーの黒のトップスを上手く着こなしている。


凄く綺麗な人…



あの人は一体誰なんだろう?