chapter4 激情と衝動、そして変動


天の一番高い所からじりじりと容赦無く照りつける太陽。表面を砂で覆われた白っぽいグラウンドはそれを照り返して強烈に目を焼く。それに加え体感温度を更に上げているのは定期的に響く怒声と掛け声、激しい動きに巻き上がる砂煙。

フェリチタがいるのは騎士団員らの鍛錬場。なぜこんな所にいるのかと言えば、それはひとえにレイオウルのせいであった。

──『これからは、可能な限り常に僕と行動を共にすること。そしてお互いの情報を共有し合うこと。これは命令だから。嫌だとか言っても仕方無いから諦めて』

湯浴みを済ませた後、落ち着いたフェリチタに落とした爆弾。フェリチタがシャノット伯爵の娘姉妹に恨まれている理由はわかっているだろうに、悪化させるつもりなのだろうか。
まして更に接触を増やせば、他にもフェリチタにいい思いをしない人は増えるだろう。そして、『森人の捕虜が殿下の寵愛を受けている』などという“くだらない”噂がもっと広がる。

……全く、心労を増やさないで欲しいのに。

あれからというものどこに行くにも二人行動だ。もう何日も経つのに。すぐ飽きるだろうと思って放っていたのだが、存外気が長いらしい。

いつぞやに部屋を覗き込んでいた団員達も見かけた。彼らから噂が広まったのだろう、皆に遠慮がちに盗み見られるためにフェリチタは居心地の悪い思いをしていた。しかしまあ、『命令』と言われては仕方が無い。ただレイオウルもさすがに気遣ってくれたのか、暫くして他の団員とは少し離れた場所に移動し鍛錬を再開した。