体育のあと、更衣室へ向かって歩いていると、背後からわっと大きな声を出して朝陽が私を驚かせようとする。

『…なに、朝陽。』


少しむっとして、足を止めることなく横目で朝陽を睨む。

「咲希ってば、背中に目でもついてるの?普通、今驚くとこでしょ!」

朝陽が猫っ毛のショートの隙間から覗く丸い大きな瞳をこれでもかというほどさらに大きく見開いて、驚いたように私を見る。



「違うわよー、あんたの声は大きいから驚かす前から後ろにいることがばればれなのよ」


更衣室のスライド式のドアの少し空いた隙間に、面倒くさそうに足のつま先を突っ込んでドアを開けようとしながら、美帆が呆れたように言う。