私のお母さんは神宮寺雅(じんぐうじみやび)という名前で、有名な老舗旅館の経営者、神宮寺孝太郎(こうたろう)の一人娘だった。
でも、お父さん……一ノ瀬竜生(たつき)と結婚するにあたって、勘当された。
お父さんは中卒で、とんでもない不良だったから。
そんなお父さんは、悪すぎて親子の縁を切られてた。
それでも、私たち三人家族は仲良く暮らしてた。
お父さんもお母さんも、私を育てるために一生懸命働いてくれてた。
「凛、今日はお父さんのために炊き込みご飯、作ろっか」
夕飯がお父さんの大好物だった炊き込みご飯のときは、お母さんは決まってこう言っていた。
「うん!」
さすがに包丁は持たせてもらえなかったけど、小さな私に出来ることすべてを、お母さんはやらせてくれた。
「お! 今日は凛特製の炊き込みご飯かー。お父さんの疲れも吹っ飛ぶよ!」
お父さんは美味しいと言いながら、何度もおかわりしてくれた。
「ねえ、りんにはおじいちゃんとおばあちゃんはいないの?」