ケータイ小説 野いちご

君のまなざし

女神
別れ




「だから、キノコって何?何のキノコだよ」

携帯電話片手にスーパーで買い物をしているんだけど、鍋の材料を買ってきてとだけいわれても料理をしない俺は何を買ったらいいのかわからない。

電話で茉優の指示を仰いでいるんだけど、あいつも
『適当でいいから。洋介が鍋を食べたいって言ったんでしょ!もう何でもいいから、いちいち電話してこないでさっさと買ってきて!』
と怒り出してる。

「だから、何を入れるのかわからないんだよっ」
ついつい大声になる。
あ、まわりの買い物客に丸聞こえだ。

あちこちから聞こえるくすくす笑う声に混じって
「よかったら、お手伝いしましょうか」
と後ろから声をかけられた。

驚いて振り向くと
そこにいたのは買い物かごを持った笹森さんだった。

「何を作るんですか?」
「あ、あー、えっと、鍋です。鍋なんですけど」
いつものきれいな顔で微笑まれて。
ううっ、気まずい。

でも、笹森さんは気にするような感じもなく話を進めてくる。
「どんなお鍋を作るのかしら?」
「どんな?」
またもや頭の中は?マークで侵食されていく。

「えっと、じゃあ寄せ鍋とかキムチ鍋とかしゃぶしゃぶとか。今日の食べたい鍋料理はどんなイメージ?」

まだよくわからないけど、肉がメインで野菜も食べたいと言ってみる。
じゃ、お肉は鶏と豚ではどちらが?と言ってくれて。
ベースの味や野菜の好みなんかを聞いてくれたら、そこから買い物はスピードアップ。

俺の意見を聞きながら次々にと買い物かごに食品を投入してくれる。
「〆は雑炊?ラーメンとかうどんかしら?」
「ラーメンがいいです」
はぁ。このまま料理上手と噂の笹森さんに作って欲しいくらい…。

「はい、じゃこのラーメンを入れたら食材は終了ですよ。奥さまか彼女を怒らせちゃったのなら、この先のケーキ屋で美味しいデザートでも買ってあげたらいかがですか?」
ふふっと笑って、じゃあまたジムでとひらひら手を振ってさっさと行ってしまった。

あまりの早業に満足にお礼も言えなかった。


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