ケータイ小説 野いちご

君のまなざし

はじまりの夜

深夜でも国道は明るい。
赤信号で止まり、ふと隣の車線に止まった車を見る。
青のスポーツクーペ。

どんな人が運転しているんだと運転席をチラッと見る。
あ、女性ドライバーだ。
車種を見て何となく男が運転しているんだと思ってた。
偏見かな。スポーツクーペは男が運転するんだなんて。
でも、この車は運転好きが選ぶヤツだろ。
車好きなんだろうか。

真っすぐ前を向き、こちらには気付かない。
俺と同じ30代半ば位か?
肩までのゆるやかなウェーブの髪。
無理なく背筋が伸びていてきれいな姿勢だ。

顔が見たいなと思うが、信号が青に変わった。
次の赤信号でまた隣に並べるかも。

片側2車線。
彼女の青のスポーツクーペの斜め後方を走らせる。
なかなか運転もうまい。
流れに乗ったスピード。エンジンブレーキを上手く使っているのか、ブレーキランプがピカピカ点灯することもない。

いるだろ。
すぐブレーキ踏んじゃうヤツ。
前の車がブレーキ踏むと無意識に自分も踏んじゃうとか。
女性に多い気がするのは俺の気のせいかな。

でも、彼女にはそれがない。
うまいなと思う。

おっ、2つ先の信号機が赤に変わりそうだ。
横に並びたい。

タイミングを合わせ、また隣に停止する。
よし、今度は顔を見るぞ。

運転席の女性ををまたうかがう。
スッとのびた鼻筋。シャープな顎のライン。
大きな瞳。
軽く下唇を噛み、前を見つめた彼女の瞳が潤んでいる?と思った瞬間、一筋涙が頬を伝い対向車のライトを浴びてキラッと光る。
え、泣いているのか?

彼女に気付かれないかどきどきしながらも目が離せない。
夜の闇、車の中の彼女の回りだけ空気が違うように見える。透明感、なのかな。澄みわたっているような。

彼女に気をとられていたら信号が変わったことに気が付くのが遅れた。青のスポーツクーペは加速していく。

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